まちづくりの新たな拠点としての平塚文化芸術ホール

清水建設・安井建築設計 設計共同企業体
清水建設株式会社 内矢雅清
株式会社安井建築設計事務所 棈木賢一
古賀愛乃

01.事業と計画の背景について
歴史的に人があつまる場所を将来のまちの在り方も見据えて再構築

平塚文化芸術ホールがある見附台地区は、平塚駅の北西の徒歩8分程度に位置している。地名の「見附台」は、旧東海道の宿場「平塚宿」の境を示し、宿場を防衛する見張りの門の役割を果たした「見附」からきており、地区内に江戸側の「江戸見付」が緑地として整備されている。また、歌川広重の浮世絵「東海道五十三次 平塚 繩手道」に描かれている舞台も見附台地区からは近い場所である。近代になってからもこの地区には平塚町役場、市議会議事堂、尋常高等小学校、市体育館、旧市民センター(1962年開館)や旧崇善公民館などが建っていた経緯があり、平塚の中では歴史的にも人が集まる場所であった。

市体育館が解体された後は、見附台公園+見附台広場が一体となって、日常的に幅広い世代に利用(子供の遊び場、親子の休息の場、ゲートボール等市民活動の場)され、長年にわたり文化・芸術・スポーツ活動の場として市民に親しまれてきたエリアである。

平塚の街は駅の北側に国の火薬工場(元徳川家康の鷹狩り場)があったことから、第二次世界大戦の空襲で「商都平塚」と呼ばれていた市街地の街並み、歴史的建造物はほぼ消滅してしまった。そこから戦後の復興を願って、1951年に第1回の七夕まつりが開催されるようになった。七夕まつりでは駅北側の商店街から人が連続して流れて来て、長年、見附台公園・見附台エリアはステージや屋台が出る会場となっていて、大勢の来訪者で賑わい親しまれてきた。現在では3日で100万人以上が訪れる「湘南ひらつか七夕まつり」となり、2025年で73回を数えている。


歌川広重『東海道五十三次 平塚 綱手道』


旧市民センター

平塚の市街地は、近年、平塚駅の北東の総合公園や美術館・博物館・市役所・ららぽーと湘南平塚があるエリアの方へ向かう人が多くなっていることから、駅北側の中心市街地を介して、東西の人の流れをつくり出し、その間をつなぎ、にぎわいを創出する役割も担う見附台周辺地区整備事業の一環として、本施設は市の都市計画公園の見附台公園と南側の商業施設・緑地とともに一体的に整備された。


平塚駅を中心とした広域MAP

事業整備範囲は平塚文化芸術ホールおよび見附台公園(A1ブロック)に加えて、旧東海道を挟むA2ブロック・Cブロック(定期借款による民間収益施設の整備)が含まれ、エリア全体で多くの人々が訪れる場を創出し、さらに平塚駅北西エリアの活性化とポテンシャルを高めている。全ブロックおよび隣接する公民館の外観を落ち着いた色調で統一し、旧東海道から見附台公園へ至る南北のメインアプローチ部にA1ブロック内と共通のバナー付照明を配置して来訪所を導く計画としている。またA1・A2・Cブロックの東側には歩道を連続整備(一部敷地を供出)し、来訪者および住民の利便性を高めている。

駅からのアプローチとなり、人が立ち止まる交差点角地には「江戸見付緑地」を整備し、今回の事業整備の起点(目印)となっている。また、南側の旧東海道から公園内と本施設西側を通り、北側に至るまでを事業整備範囲内における「賑わい軸」として設定し、商業施設(マチカフェ)や展示スペース、多目的ホール、大ホールホワイエ等を配置している。


見附台周辺地区全体配置図

誰にでも親近感が持てる日常の居場所と新しい賑わいの場を創出

見附台地区は「江戸見附」につながる「みつける」をテーマに、「日常使い」「親しみやすさ」「交流のきっかけ」「安全安心」を骨子にして、「ホール」「パーク」「ダイニング」として計画・運営を行っている。

地区全体として目指す方向性として、①回遊性や賑わいを創出し、日常使いや交流を生みだすこと。②利便性の向上として、生活に密着した市民のための場所を創ること。③まちなみ創出として、自然環境と歴史資源を活かし、旧東海道沿いを整備すること。④子どもたちが安心して遊べ、多くの人が集うエリアとして防災にも配慮した見通しのよい安全な場所とすることの4つであった。

見附台地区と平塚文化芸術ホールはいつも何かやっている、毎日立ち寄りたくなる居場所になり、事業全体で一体となって、様々な相乗効果を生み出している。


見附台周辺地区全体コンセプト

エントランスホールに諸室が顔を出す内部配置と周辺環境に調和した外観構成

本施設は市民の⽂化芸術活動の新たな拠点であり、さまざまな世代の⽇常の居場所となることで、新たな人の流れ・人が集まる場所を創出する役割が期待されている。エントランスホールのまわりに、大ホール(約1200席)、平土間形式の多目的ホール(約200席)、大小練習室、文化芸術支援室、会議室、各種展示・情報コーナーなどをもつ複合施設である。

外観は、巨大になりがちな劇場施設のボリュームを分節してランダム配置することで、「平塚宿」の宿場町の旅籠が連なるイメージを表現するとともに、旧市民センターの外観の白を基調とすることで近隣への圧迫感の低減も図っている。公園側及び正面(南側)の低層部は大庇と端正で透明性の高い空間とし、ガラス越しに人の活動が景色となる親しみやすい姿を目指している。


全景鳥瞰写真


外観夕景写真:正面(南側・旧東海道側)

見附台公園との一体的な賑わいの創出のために、大庇は人々を大きく包み、建物の外部と内部をつなぐ役割を果たしている。また大ホールホワイエ・多目的ホールがグラウンドレベルで公園と直接つながる断面計画とし、大開口を開くことで一体利用を可能とし、どこでも舞台や客席となる計画としている。


ホールホワイエと公園がつながる断面計画図

PFI法に準じたDBO方式の事業(民間活用)を十分に活かした施設・運営企画づくり

本事業の設計・施工・運営のスキームは、PFI法に準じたDBO方式の事業(民間活用)であった。事業コンペの時からコンソーシアム内の4分野「設計」「建設」「運営、維持管理」「事業企画」+「舞台設備」が共同で、コンセプトメイキングと建築計画の骨格をしっかりと共有できていた。そのことで事業者に特定された直後にコロナ禍に見舞われたが、基本設計スタートから建築計画と運営・事業企画の両面で共に、スムーズに連係することができて、普段使いの場所づくり + 多様な公演が可能となっている。この地にふさわしい⽂化芸術活動の場に加えて、市民交流の場づくりが実現している。


事業コンソーシアム概念図

公共ホールは設計・建設が先行し、後から運営者(指定管理者になる場合もある)が(竣工後に)参入するケースもあり、設計者とホールの運営・イベント企画事業者間でコンセプトの共有意識を図ることが難しいこともあり、施設が十分に活かされないこともある。またホールの貸館業務が中心となってしまい、本来、晴れやかな場ともなるホールは、イベントの無い日は施設が閉鎖的となり、人の気配が感じられない寂しい印象となることもある。

しかし本施設は、公園に訪れる多世代の人の姿のみならず、施設内のオープンスペースのテーブル・ベンチにも子ども・生徒から社会人が想い思いにすごしている姿や、公園に面した大ホールのホワイエ空間の開放(恐らく他のホールにはほとんどない)と公園ひろばと連動したステージ構成・イベントの実現などは、運営・企画チームが設計コンセプトに共感し、日々の運営や様々なイベントに応用していくことを努めていただいている点が大きいと感じるところである。

平塚の過去と先の未来をつなぎ、人と活動、人と人をつなぐ存在になってきている。

02.施設計画について
「みんなが、みつける、つながる、はぐくむ」ホール&パーク

施設コンセプトとして “「みんなが、みつける、つながる、はぐくむ」ホール&パーク”を掲げ、次の3つを軸とした。

  • まち・公園とホールがグランドレベルでつながる
  • 普段使いの様々な『居場所』
  • 市民に愛されるホール

1)まちとホールがグランドレベルでつながる―どこでも舞台や客席となるホール&パーク

通常のホールは1階席後方が2階ホワイエに接続し、ホール背面はバックゾーンになってしまうが、今回計画では1階席の勾配を緩やかにし、ホワイエ・縁側ステップを介して公園に接続できる構成とした。

半屋外空間の縁側ステップは、平素はベンチとして休憩したり、舞台として利用したりでき、大開口を開け放つと公園との人の流れが生まれる、オープンで多機能な空間である。

また、多目的ホールはエントランスホール・公園と隣接させ、大開口を開け放して一体利用できる計画とした。


公園―大ホール 断面図

公園―多目的ホールーエントランスホール 断面図


配置図


大開口から公園へ人々が流れ出す


休息や語らいの場としての
ベンチ利用


ステージとして利用

2)普段使いの様々な『居場所』―分散しながらちりばめられた集合体

オープンスペースや路地をちりばめ、情報発信や人々の憩いのための様々な仕掛けを配置することで、あらゆる世代が普段使いの自分の居場所をみつけ、使う人の想像力が喚起される空間構成とした。

○様々な賑わいが顔を出すエントランスホール

2層吹抜のエントランスホールを中心に施設を構成し、大ホール・多目的ホール・大小練習室・文化芸術支援室・大小会議室・和室・各所オープンスペースが顔を出し、賑わいを創出する。


様々な賑わいが顔を出すエントランスホール

○公園・エントランスホールと一体利用が可能な多目的ホール


エントランスホールから
多目的ホール・公園を望む


大開口によりエントランスホール・公園と
つながる


公園をバックにしたピアノコンサート風景


公園からも自由に出入りできる一体的なイベント風景

多目的ホールは 平土間形式で最大200人を収容し、音楽や演劇、ダンスから講演会・展示会まで多様な演目に対応することが求められた。

本施設の顔としてエントランスホールと公園に挟まれた位置に配置し、エントランスホールおよび公園の両側に、それぞれガラスとパネルの遮音スライディングウォールを2重に配置し、それらを全て開け放つと、エントランスホール~多目的ホール~公園がつながり、一体利用が可能な計画とした。

様々な演目・舞台位置・客席形式に対応するため、3台の昇降式グリッドバトンとそれを取り囲む目の字型のキャットウォーク、技術ギャラリーを配置した。

大ホールとの同時利用を可能にするため、Box in Box構造とし、ホール内の仕上面(パネルのスライディングウォールを含む)はフラッターエコーを防ぐために、対面する壁は吸音・反射要素が交互に配置されている。

多目的ホールは実に様々な使い方をされている。公園側のガラス面越しの風景をバックにしてピアノコンサートを行い、エントランスホール側を開け放してエントランスホールまで観客があふれ出したり、公園側の大開口を開け放ち公園から自由に出入りできる一体的なイベント利用等、ハード面の特徴を熟知した運営の様々な工夫がなされている。

○エントランスホール吹抜まわりの諸室・オープンスペース

多目的ホールホワイエ・待合

多目的ホールの南側は多目的ホールホワイエや待合スペース、ギャラリー等、様々なシーンに対応できるスペースとして計画されている。神奈川県産桧材で製作したベルトパーテション付きのBOXや展示用家具・展示パネルはキャスターがあることで、スペースを分割しながら使うことも可能である。移動可能な「屋台」は様々なイベントにおいて来訪者を迎える顔となる。


多目的ホールホワイエ:バレエ展示の様子


「屋台」がイベント来訪者を迎える

大練習室

1階大ホール近くに位置し、大ホールのリハーサル室としての位置付けに加えて、単独での音楽演奏・バレエレッスン・講演会等、幅広い利用が可能である。防振防音構造(Box in Box)とし、カーテンによりバレエ用大鏡・レッスンバーを隠すことができ、吸音量を調整できる計画としている。


大練習室:エントランスホール側から
内部の活動が見える


大練習室:内部からエントランスホール側の
活動が見える

小練習室

バンドや管弦楽器などを少人数で練習できるスタジオとして、2階南側に2室配置した。防振防音構造(Box in Box)とし、平行な壁を作らないことでフラッターエコーを防ぎ、天井と壁で必要な吸音性能を確保している。


小練習室:共用部側から内部の活動が見える


小練習室内観

文化芸術支援室

2階から吹抜に一部飛び出す形で配置された文化芸術支援室は、工作・絵画等の活動ができる部屋で、四周ガラス張りで中の活動が見えるようになっている。南北がガラスのスライディングウォールとなっており、開け放つことで共用部と一体空間とすることができ、開放的なイベントやギャラリーとしての利用が可能である。


文化芸術支援室:共用部側から内部の活動が見える


文化芸術支援室:共用部と一体的で開放的な
イベント状況

キッズルーム


キッズルーム内観

1階受付脇に配置し、2面をガラス張りとして、受付およびエントランスホール側から見守りができる計画としている。遊具や絵本講師が選定した絵本を置き、平時に親子で過ごすことができる。また、定期的にベビーマッサージ教室や絵本講座が開催されている。

大会議室

1階情報コーナーの東側に位置し、会議室やイベント会場、イベント控室として利用されている。スライディングウォールで大小2室に区切って利用することもできる計画としている。廊下は全面ガラス張りで、中の活動が外部ににじみ出し賑わいを創出する。


大会議室:共用部側から内部の活動が見える


大会議室:イベント開催状況

小会議室


小会議室内観

多目的ホールの1階北側に位置し、平時は会議室として利用される他、多目的ホールの楽屋としての利用が可能な計画としている。

オープンスペース・情報コーナー

1・2階のエントランス吹抜まわりに、平塚の魅力、地域活動や文化芸術に関する様々な情報を得られる情報コーナー、休憩や勉強などのためのオープンスペースなど大小様々なスペースをちりばめた。

学校帰りの高校生が日常的に勉強したり、公園を訪れた親子が休息したり、イベントがないときでも賑わい、市民に親しまれている。各コーナーには神奈川県産桧材のオリジナル家具を配置している。350mm角のBOXを基本モジュールとして、各スペースの用途にあわせてアレンジされている。


2階オープンスペース


2階オープンスペース・平塚に関する情報コーナー


1階情報スペース


1階情報スペース

和室


和室内観

2階東側の和室は8畳に炉を切り、お茶会や茶道教室行える本格的な設えとしている。地元の茶道協会からもヒアリングを行い計画に反映している。また、茶道だけの利用ではなく、施設全体で開催されるイベントの控室利用等、柔軟な運用が行われている。

3)市民に愛されるホール


大ホール:舞台から客席を臨む


大ホール:客席から舞台を臨む

高い音響性能を有し、様々なシーンに対応できる多機能ホールとし、「平塚らしさ」が感じられ市民に愛されるホールを目指した。

大ホールはオーケストラから演劇・講演会まで、幅広い演目への対応が求められた。

1階席約650席、2階席までで約1000席、3階席までで合計1200席の3層構成の客席とし、様々な用途や客席規模に応えるとともに、最大視距離を30mに抑えサイドバルコニーで取り囲み、舞台と客席が近く一体感や臨場感のあるホールを目指した。また、丁寧な視線検討により、1階席が後方で公園とつながるよう傾斜を極力抑えながら、どの席からでもよく見える客席配置を実現した。

可動音響反射板・可動プロセニアム・オーケストラ迫りを備え、様々な演目に対応する多機能ホールとしている。

大ホールは鉄骨鉄筋コンクリート造とし、高い遮音・防振性能を確保している。客席天井は室容積を確保しながら天井からの初期反射音が均一に客席に到達するよう、大天井の下に浮雲状の曲面天井を設け、客席側壁は折板形状とし舞台からの音を客席奥に送り出し、バルコニー席は音響庇として機能し、2回反射音を客席に豊富に到達させている。

また、側壁に設けられた形状・角度が異なる木製ルーバーや壁面の塗装の細かなザラツキは反射音を適度に拡散させることに寄与している。

平塚は「湘南ひらつか七夕まつり」で有名であるが、七夕まつりの短冊や吹き流しをモチーフとした壁面デザインとした。また座席の張地の配色は「七夕の夜空」をイメージし、濃紺の夜空に笹飾りの緑色が差し、「夏の大三角形」の星座をちりばめたデザインとすることで、通年的に「平塚らしさ」を感じられるホール空間とした。


七夕まつりの短冊や吹き流しを
モチーフとした壁面デザイン


「夏の大三角形」の星座をちりばめた
座席配色デザイン

大ホール1階席の後方と側面に大きなガラス開口を設け、ホワイエ側から大ホール内部が開かれたつくりとしている。(演目により遮光カーテンで完全暗転可能)この開口により、大ホールはホワイエを介して、エントランスホールや公園とつながっている。ホール開放イベント時などに、来館者が大ホールを覗き込むことで文化芸術に関する興味を誘発されることをねらっている。


大開口により大ホールと共用部・公園がつながる


大ホールと公園がつながる


大ホール居住域空調のシミュレーション

空調計画について、舞台は幕揺れ・音に配慮した置換空調方式とし、舞台近くの側面から風速を抑えた吹出しを行い、客席は床吹き出し方式による居住域空調を行っている。

音響計画

本施設は1,200席の大ホール、最大200人収容の平土間の多目的ホール、大・小練習室、大・小会議室、文化芸術支援室などの諸室からなり、各室は開放的なエントランスホールに面するように配置されている。大ホール以外の各室のエントランスホール側はガラス面で構成された開放的な建築計画の中で、各室を有効に利用するために各室間の遮音性能の確保が重要な課題であった。

大ホールの壁を鉄骨鉄筋コンクリートで区画した上で、大音量の発生が想定される多目的ホールと大・小練習室は防振防音構造(Box in Box)とした。各室間の遮音性能は、大ホール~多目的ホール、大ホール~大・小練習室、多目的ホール~大・小練習室でいずれも85dB以上(500Hz)の遮音性能を確保し、聴感的にも音源側の音を受信側ではほぼ検知できず、ほとんどの催し物の同時利用が可能である。

大ホールの残響時間(500Hz)は舞台反射板設置時で空席時2.2秒/満席時1.8秒、舞台幕設置時では、空席時1.7秒/満席時1.5秒である。舞台反射板を設置するクラシックコンサートでは長めの豊かな響きが得られ、舞台幕設置時は響きが抑えられたクリアな拡声が得られている。

多目的ホールの残響時間(500Hz)は空席時で約1秒であり、中庸で様々な演目に適した響きが実現されている。


2階遮音区画図

1階遮音区画図

遮音区画図

03.平塚文化芸術ホールでみられる、空間を活かした使われ方

1)地域にひらかれた居場所、普段使いの公園の中にある文化芸術拠点

前述のとおり、駅前の市街地活性化や東京・神奈川の中心から少し離れた場所に建つホールとして、より地域の方の生活に密着したにぎわい拠点になることが、このホールで大切なことである。

子どもたちから働き盛り、高齢者の方まで、広い層の方に文化芸術に触れてもらえる機会づくりと、何度も来たくなる居場所として、具体的な使われ方の一部をご紹介する。



文化施設の中で起こる日常的な滞在場所と文化芸術の出会いフロー

2)屋内のロビーとつながる


屋内のロビー~多目的ホール~公園に
広がるパフォーマンス

文化芸術の発表・催しがホールの中から、ロビー等の共用部に飛び出して、コンサートやパフォーマンスが見える・聞こえることを意図している。

ホール環境はやや劣ってしまうが、それ以上にアーティスト・演者の姿をより広い人の目にふれること、施設全体が一つのホール、一つの文化芸術の発信の場、ととらえての取り組みである。催し、コンサートへの参加のハードルを下げ、すそ野が広がる効果もある。

また、鑑賞スタイル、催しの雰囲気もホール公演とは違った良さがある。さまざまな場所から見る、聴けるというのは、「ホールでチケットを買って、決まった席でじっと聞く」体験とは異なり、「よりリラックスして、その人の思うままに自由に聴く・見る」「演目ごとに移動して、いろんな角度からパフォーマンスを見られる」「楽しい雰囲気」「一緒に楽しむ一体感」といった鑑賞スタイルもより自由度が高くなる、といったプラスポイントと感じている。アーティスト・演者とお客さんとの距離間がより近くなることも特徴である。

毎月のオープンライブ


多目的ホールのコンサートを
ロビーから見る様子

あえて大ホールの専門的空間を飛び出して、一般利用者の方からも見える場所(多目的ホールを開いた状態、大ホールホワイエ)を拠点に地元アーティストのライブ公演が毎月行われている。ふらっと入れることで催しへの参加のハードルを下げ、アーティスト、活動団体の認知度アップを期待しての取り組みである。

また、必ずしも鑑賞目的専用の場所ではないフリースペースの利用者にも音楽が聞こえパフォーマンスに興味関心をもってもらうきっかけに繋がることを期待している。

大ホールホワイエでの演奏会

芝生広場が演者の背景となる空間的な広がりがあるのびやかさ、タイル張りの床の環境で館内に響く環境等が、大ホール内部で演奏する状況とは違った雰囲気をつくり、鑑賞者側としても個人的に初めて体験する演目についても親しみ感が持てる効果等がある。

同様に多目的ホールにおいても、内側の2重遮音壁は開いて、外側のガラスのパーティションのみとして、ホール内での練習活動や、本番のパフォーマンスをエントランスホール側に見える形で使っている。


公園・室内からも見えるのびやかな
大ホールホワイエコンサート


多目的ホールの催しをロビーに開く様子

3)外とつながる 公園・芝生広場と連続するホール

幅広い利用を促す多目的ホール


仮設のミニSLが公園~多目的ホールへ続く様子

ミニチュアSL乗車イベント、野外工作ワークショップ等は、芝生と連続することで、内部空間に閉じこもるのではなく、外部の公園までもシームレスに延長した広いマルチスペースとしての活用例である。

多目的ホールは健康体操、ヨガ、サッカーのワークショップ等、文化芸術にとどまらず、身体を動かす運動にも利用され、外部が臨め、外部とつながる空間の特性を活かされている。

公園とつながる大ホールホワイエの幅広いスペース


大ホールホワイエ前の大開口と
公園をひらく様子

公園に面して連続した開く開口部を設けた。大ホール1階客席の勾配を緩く抑え、ホワイエの床レベルを公園と近づけ、連続感のあるスペースとした。

・大ホールイベント前後 :ホワイエを半屋外的に伸びやかに活用。公園に遊びに来た人にもイベントに興味を持ってもらうきっかけになるとよいと考えている。

・館内+公園の一体イベント時 :ホワイエ・階段ステップをステージに見立て、公園側から観覧スペースを設けることも想定している。

芝生のワークスペース


芝生広場での工作WSの様子

外の広い芝生広場で、竹細工の加工・オブジェ、流し素麺のカラフルボール版を広場一杯に自由に広げ、つなげていったもの。ホールに入ったことがない親子連れにも来てもらえるきっかけが生まれている。

ホール内部から公園にも飛び火したステージ


弧を描いたデッキステージを
芝生の観客席の様子

公園内には小上がりのデッキスペースがステージにもなる設計としている。観客は芝生広場から見るスタイルである。和太鼓イベントでは、大きな太鼓が外部で打ち鳴らされる状況は、内部の空間とは違ったお祭り感をつくり出している。

4)建物全体をつかった全館イベント ~湘南バレエ・コンペティションの事例~


全館イベント利用時の各イベント配置の例

中学1年生~25歳を対象にしたコンテンポラリー部門とクラシック部門において、年齢に応じた複数の部門のコンペティションが初秋に3日連続で行われている。その時は本施設のほぼ全スペース・部屋を活用した全館イベントとなっている。

・コンペティション本会場:大ホール
・リハーサル会場    :多目的ホール、大練習室
・ワークショップ会場  :大ホール、多目的ホール、
             大練習室
・表彰式        :大ホール舞台
・審査員とのトークセッション:大ホールホワイエ
・審査員からのアドバイス会場:大練習室
・衣装ギャラリー    :エントランス前ギャラリー
             (多目的ホールホワイエ)
・マルシェ・ショップ  :1Fロビー、多目的ホール前
・身体ケア       :2F文化芸術支援室


大ホール:コンペティション本番


多目的ホール前のロビー:手作りマルシェ・ショップ


ギャラリー:バレエ衣装のディスプレイ展示


文化芸術支援室(2F):マルシェ・ショップ

5)見えること、そこで活動する“人”が見えることの効果

建築のプラン構成ポイントは、“地域の居場所となる文化施設”となっている。広めのオープンスペースと施設内の路地との組み合わせによる空間のメリハリと活動に応じた空間の選択が可能となっている。(各スペースの詳細は第2章オープンスペース・情報コーナーも参照ください)

  • エントランスホールとそこの吹抜に活動室が顔を出している構成
  • オープンスペースと路地を織り交ぜた施設内を散策できるウォーカブルな共用部
  • 路地に面した展示コーナー

見附台地区の商業施設への買い物後の立ち寄りや、公園に遊びに来たその延長に開かれた文化施設があることで、文化芸術活動の催しや地域イベント、そこで活動する人との出会いが日常的に生まれることを期待する。


エントランスホールを介して活動室・
オープンスペースが一同に介す様子


多目的ホールのイベント団体の活動が
周知効果にもつながる


大ホールの客席(上手)一部から中がのぞける様子


大練習室越し練習・活動する人が見える

最後に


地域ネットワークによるイベント開催風景

本事業はホール&パークの魅力を最大化し、様々な世代が日常的に自由に利用でき、いつもどこかで何かが起こっている、賑わいが絶えない施設を目指した。また、単なる箱物を作るのではなく、市内外の様々な文化団体・学術団体・商業団体とのネットワークの構築や、一般市民が運営に参画できる仕組みづくりにより、市民自身がまちづくりに参画するできることのできる拠点となることを目指した。本施設がまちづくりの拠点となり、市民に愛される施設に育っていくことを願っている。