名古屋市民会館 見学会記

幸 和紀(JATET建築部会委員・武蔵工業大学客員研究員)


 JATETの主催により、大規模改修工事を終えたばかりの名古屋市民会館の見学会が平成13年(2001)5月28日(月)に催された。
名古屋市民会館は昭和47年(1972)開館のホールで、開館後28年を経過した昨年平成12年(2000)より32億円の工事予算を費やした大規模改修に着手し、平成13年(2001)5月に工事を終え、同6月にリニューアルオープンを迎えることとなり、本見学会はリニューアルオープン直前に開催された。
 見学会では、市民会館職員の方々が事前に充分な資料の準備や見学会ルートの設定をしてくださり、見学会参加者への丁寧な対応をしてくださった。
 見学会へは、各種舞台機器関連メーカの関係者を中心に約70名の参加があり、大盛況であった。

改修の経緯と改修の概要
 名古屋市民会館は、開館直後の昭和47年(1972)、昭和48年(1973)の第一期改修をはじめとして、各部の様々な改修を行ってきたが、今回の大規模改修工事は、地域整備事業債(ふるさとづくり事業)による32億円の起債を行い、特に会館の根幹施設を中心とした改修となった。改修工事の主な目的は「市民会館の建替を念頭におき、平成20年(2008年)までの延命を目的とし、今後10年間設備を維持する最低限の改修」とのことである。その筆頭として、会館機能の停止を防ぐために、老朽化した根幹設備の早期改修が実施されたわけである。具体的には受変電設備の全面更新、空調設備改修、衛生設備改修、舞台機構改修、舞台照明設備改修、舞台音響設備改修が行われた。改修工事項目を決定するうえでの判断基準は「早急に改修を要するもの」で、特に「現状でも不具合のあるもの」、「早々に不具合の発生の恐れがあり、改修時に長期休館を伴うもの」、「故障不具合が直接会館運営に決定的な影響を与え、改修時に長期休館を伴う重要設備」、「老朽化している非更新対象設備機能を、今後の会館運営に支障なく維持する対策」等である。
 改修を実施するにあたっては、平成12年(2000)8月いっぱいで施設の貸出を終了し、同9月より平成13年(2001)5月末日まで9ヶ月間の休館期間を設けている。この9ヶ月間における改修工事の詳細としては、先ず最初の約2ヶ月で、機器搬出入のためにマシンハッチの拡大を行っている。それとやや並行して、平成12年10月より受変電設備改修と空調・衛生設備改修に着手し、これは休館期間の終わる平成13年5月まで工事が続いた。
 受変電設備の改修では、特別高圧受変電設備、高圧変電設備等の変圧器の方式変更や容量の増加が行われている。また、非常用発電設備の容量増加も行われ、加えて電力監視盤をリレー制御盤からマイクロコンピュータ制御盤に変更することも行われている。
 空調設備改修では、各種熱源の更新・方式変更、空気調和機の更新・撤去やコイル取替、変電室・配電盤室等の送風機類の新設等が行われた。
 衛生設備については、副受水槽を1基更新の他、上水配管をはじめとする各種配管の更新等が行われている。
次に平成13年1月より舞台照明設備改修と舞台音響設備改修に着手し、更に同2月より舞台機構改修に着手し、いずれも同5月までに工事を終了している。
 舞台照明設備は、大・中ホールとも操作卓やプリセット卓の更新、負荷選択盤の更新、調光盤部分の改修を行った。その結果、大ホールでは容量500kVA、負荷回路数318、中ホールでは容量500kVA、負荷回路数305となり、いずれもDMX512対応となっている。
舞台音響設備も大・中ホール同様の改修で、音響調整卓の更新の他、吊りマイク、マイクエレベータ、プロセニアムスピーカの更新を行っている。音響調整卓を更新した結果、大・中ホールのいずれも入力32ch、出力32chとなった。
舞台機構では、大・中ホールともマシン及び制御盤の改修と操作卓一式の更新を行っている。特に中ホールは廻り舞台を備えているが、その制御方式をインバータ方式に変更し、駆動部取替及び制御盤更新を行っている。迫りについては、大・中ホールの全てについて駆動部の取替と制御盤の更新を行った。また中ホールの反響板及び大・中ホールの電動吊物についても、駆動部や制御盤の取替・更新を行っている。
 以上が名古屋市民会館大規模改修の概要であるが、上記の改修工事と並行して、大・中ホール1階客席の座・背・肘木の取替、客席・ホワイエ・楽屋その他諸室の内装改修、及び各種備品の修繕・点検等も行っていることを付け加えておく。

改修に際しての予算の獲得
 見学会終了後の質疑では、参加者より改修工事予算獲得の方法や工夫についての質問があった。これに対する回答としては、必要とされる改修工事項目が重要事項、懸案事項であることを、財政当局等に充分理解してもらうことが何よりも重要とのことであった。そのためには、必要があれば財政局も交えてのヒアリングや改修施設見学会を行うこと、また予算措置への要求に際しては、他施設の改修実績を把握し、面積比較・設備の能力比較等を行い、要求金額を客観的に説明するべきであるとのことであった。

結語
 見学会の間もこうした活発な質疑が参加者からあがり、会館職員の方々が一つ一つ懇切丁寧に御説明くださった。その結果、見学会は予定の時間を一時間以上超過したが、会館職員の方々の名古屋市民会館に寄せる思いが伝わってくる思いであった。
 末筆ながら見学会実施の為に御尽力戴いた会館職員皆様の御厚意に厚く御礼を申し上げるとともに、名古屋市民会館の今後の御発展を心よりお祈りする次第である。